断熱性能はどのように確認する?年中快適に暮らせる家とは
家づくりをするにあたって、近年の生活環境の変化や光熱費の節約のためにも、より断熱性能の高さにもこだわりたい、と思う方も多いのではないでしょうか。
ただし、どれくらいの断熱性能があればいいのか、そもそも断熱性能が高いことで、どんなメリットがあるのか、詳細までわからない方も多いでしょう。
この記事では、1年中あたたかく快適に過ごせる家づくりをするために、断熱性能についてわかりやすく解説します。
後悔しない家づくりをしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
断熱性能を表す等級について
まずは、断熱性能を表す等級について説明します。断熱性能の等級とは、住宅の断熱性能の高さを等級で表したものです。
国土交通省が制定した「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「住宅における断熱性能の評価等級」を「断熱等性能等級」といいます。住宅性能表示制度のひとつの評価基準です。
7段階に分けられている
断熱等性能等級は、2022年10月1日の制度改定により、1〜7段階に分けられており、数字が大きくなるほど断熱性能が高くなります。この数値を確認することで、断熱性能が高い住宅なのかどうかが確認できます。
断熱等性能等級は、以下のように1〜7段階に分けられています。等級1〜4は、1999年までに制定され、等級5はZEH基準、等級6〜7は戸建てを対象としたZEH基準以上のさらに上位等級として、2022年に創設されました。
等級7 | 暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね40%削減可能なレベル |
等級6 | 暖冷房にかかる一次エネルギー消費量をおおむね30%削減可能なレベル |
等級5 | 断熱等性能等級4より上位の「ZEH(ゼッチ)基準」相当が断熱等性能等級5になる。断熱材や窓ガラスなどは、断熱等性能等級4以上に高いレベルの断熱が必要。 |
等級4 | 壁や天井だけでなく、開口部(窓や玄関ドア)なども断熱が必要。「次世代省エネ基準」といわれる。 |
等級3 | 一定レベルの省エネ性能を確保。「新省エネ基準」といわれる。 |
等級2 | 40年前の基準なので省エネのレベルは低い。 |
等級1 | 上記以外 |
UA値とηAC値とは
断熱性能は、UA値とηAC値という住宅の外皮性能を示す値により、構成されています。
UA値(外皮平均熱貫流率)とは、室内と外気熱の出入りのしやすさの指標です。UA値は「建物内外温度差を1度としたときに、建物内部から外皮(屋根や外壁、床、窓やドア等の開口部など建物の表面)を伝わって逃げる単位時間あたりの熱量を、外皮面積で割った数値」であり、値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを示します。
ηAC値(平均日射熱取得率)とは、太陽日射室内への入りやすさの指標です。ηAC値は「単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で割った数値」であり、値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高いことを示します。
断熱等級が高い住宅のメリット
次に、断熱性能が高い住宅では、実際どんなメリットがあるのかを紹介します。
季節を問わず快適に暮らせる
断熱性能が高い住宅では、室内の気温を一定に維持でき、季節を問わず快適に暮らせます。断熱性能が高ければ、室内の空気が外部に逃げるのを防ぎつつ、太陽日射による影響も抑えられるため、外気に室内の気温が左右されることがなくなります。
よって、冷暖房によって調整された気温を保ち、夏は涼しく、冬はあたたかく快適に過ごせるのです。
光熱費の節約ができる
断熱性能が高い住宅は、光熱費の節約ができるのも大きなメリットです。外気の影響を受けず、室内の気温を維持できるため、冷暖房を効率的に使用できるためです。
冷暖房は、地球温暖化などの影響もあり、私たちの生活にとって必要不可欠なものとなりました。断熱性能の高い住宅を選ぶことで、必要経費を節約できるのは大きなメリットです。
さらに、省エネルギー住宅は環境への負荷を軽減し、持続可能な生活を支援することにも貢献します。
ヒートショックのリスクが減る
ヒートショックとは、家のなかの温度の変化にともなって、血圧の変動が大きくなり、脳梗塞や脳出血、心臓疾患などを引き起こす現象のことです。断熱性能が高い住宅では、室温が一定に維持できるため、ヒートショックのリスクを減少できます。
また、ヒートショックだけでなく、結露の発生も抑えられるため、カビやダニによる影響も軽減できます。断熱性能の高い住宅は、快適に過ごせるだけでなく、健康を維持することにもつながるのです。
さらに、住まいの清潔さを保つことで、家族全員が安心して暮らせる環境が整います。
補助金などの優遇が受けられる
日本ではエネルギー基本計画等において、2030年度以降に新築される住宅は、ZEH基準の水準が省エネ性能の確保を目指しています。それにより、2025年度には断熱等性能等級4以上の省エネ性能の義務化がはじまります。
それにより、さまざまな補助金などの優遇制度が設けられています。たとえば、子育て世代などによるZEH水準の住宅購入補助や、フラット35における断熱等級5以上の住宅に対する金利の引き下げなどです。
補助金などをうまく利用することで、断熱性能の高い住宅を、費用を抑えて建てられます。さらに、これらの制度を活用することで、環境負荷の低減にも寄与でき、次世代に優しい住まい作りが可能になります。
高断熱住宅の注意点
断熱性能が高い住宅は多くのメリットがありますが、注意すべき点もあります。断熱性能の高い住宅の建築を検討されている方は、以下の注意点をしっかり確認しましょう。
建築費用が高額になりやすい
断熱性能を高くするためには、品質の高い断熱材などの資材の調達や、気密性を高めるための高度な技術を要する業者に依頼することが必要です。よって、建築費用は高くなる傾向にあります。
たとえば、断熱等性能等級4から等級7へとグレードアップする場合、200万円程度の費用がかかるといわれています。
ただし、確かに建築費用は高くなりますが、メリットでもお伝えしたとおり、補助金などの優遇や、光熱費などの節約も可能です。よって、建築費用だけにとらわれることなく、日々の支出バランスなども考慮に入れ、検討することが大切です。
高い施工技術が必要になる
高気密・高断熱の住宅では、壁や床、天井の内部で結露が発生する可能性が高くなります。内部結露は、断熱材を入れる際にすき間ができることでおこり、カビなどの原因となります。
そのため、断熱性能を高めつつ、結露の発生を抑えるためには、高い技術をもつ施工会社が必要になります。業者選びの際には、断熱性能の高い住宅の建築経験が多い、高い技術をもつ施工会社を選択しましょう。
空気がこもりやすい
断熱性能の高い住宅は、室内の空気を外界に逃がしにくくしているため、空気がこもりやすいというデメリットがあります。空気の出入りが少ないため、室内の気温を快適に保てますが、ハウスダストなども溜まりやすいため、注意が必要です。
ハウスダストなどの対策は、設置が義務付けられている24時間換気システムを活用することです。これにより、窓を閉めたまま外気を取り込みつつ、室内の空気を循環させることができます。
断熱性能を高めるためには
では、どのような工夫をすれば、断熱性能を高められるのでしょうか。以下に、断熱性能を高めるために取り入れたいポイントを紹介します。
窓や玄関のドアを断熱性が高いものを採用する
まずは、窓や玄関のドアに断熱性能の高いものを取り入れていきましょう。空気や熱の出入りが一番多い場所は、窓や玄関のドアなどの開口部です。
よって、窓や玄関のドアに断熱性の高い素材を選ぶことで、断熱性の向上が期待できます。
たとえば、窓であれば、二重サッシを取り入れたり、ペアガラスやトリプルガラスを採用したり、遮熱効果のあるコーティングを施したりする方法があります。
また、ドアに関しても、断熱材が充填されたものや、熱を遮断する構造のドアを選ぶとよいでしょう。玄関ドアの周りには、すき間風を防ぐためのシールやパッキンを取り付けることも効果的です。これにより、外部からの冷気や熱気の侵入を防ぐことができます。
断熱材を使用する
断熱材を、天井や床、壁に使用することで、断熱性能を高められます。空気や熱の出入りは開口部ほどではありませんが、壁や屋根などからも、熱の出入りは多いものです。
よって、壁に断熱材を入れるだけでなく、天井にも断熱材を敷き込むなどの方法を試してみましょう。また断熱材は、施工会社やハウスメーカーによっても性能や種類が違うため、確認することが大切です。
断熱性はリフォームでも高められる
断熱性能を高める工事は新築時だけではなく、リフォームでも対応することが可能です。
天井や壁などに断熱材を敷き込むためには、大掛かりな工事が必要です。しかし、窓や玄関ドアなどの開口部に対するリフォームであれば、比較的簡単に断熱性能を高められます。
たとえば、内窓の設置や窓を断熱性能の高いものに取り替えるなど、さまざまな方法があります。
リフォームの場合でも、断熱性能の一定水準を満たすことで、減税などの対象となる場合もあるため、ぜひ確認してみましょう。
高断熱住宅を建てるハウスメーカーの選び方
それでは、断熱性能の高い住宅を建てるためには、どのようなハウスメーカーや施工会社を選択する必要があるのでしょうか。後悔しない家づくりをするための、確かな施工力のあるハウスメーカー選びのポイントを解説します。
ハウスメーカー選びにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
断熱等性能等級4以上
まずは、断熱等性能等級4以上の住宅を多く施工している、ハウスメーカーを選ぶことが大切です。前述したとおり、断熱等性能等級とは、等級1〜7段階に分けられ、数字が大きいほど断熱性能が高い住宅であることを表す指標です。
断熱等性能等級の等級4は「省エネ基準」に相当し、等級5は「ZEH基準(Net Zero Energy House:省エネルギーを実現した上で再生エネルギー等を導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のこと)」に相当します。
これらを確認することで、そのハウスメーカーでは、どの程度の断熱性能の高さがある住宅を建てることが可能なのかを、確認できます。
国の省エネ施策により、新築住宅において、2030年度には断熱等性能等級5以上の確保を目指し、2025年度に断熱等性能等級4以上の義務化がスタートします。その点からも、施工に関わるハウスメーカーの選択は、慎重に行うことが大切です。
豊富な施工実績
次に、ハウスメーカーのホームページを確認したり、問い合わせをしたりするなど、施工実績を確認することも大切なことです。
断熱性能を高めるためには、確かな施工力が必要であり、職人の技術によって大きく結果が変わります。よって、断熱性能の高い住宅を多く施工しており、実績が豊富なハウスメーカーを選ぶことが重要なのです。
ホームページだけでなく、そのハウスメーカーで家づくりをした方の口コミなども参考にして、判断するようにしましょう。
モデルハウスや見学会へ参加
ハウスメーカーでは、完成見学会やモデルハウスの展示会を行っています。各ハウスメーカーがさまざまな機能を取り入れた住宅を、実際に見て体感できます。
断熱性能や気密性の高さについても、展示会や見学会に参加し、各ハウスメーカーの高断熱・高気密住宅を感じてみることをおすすめします。もし、夏や真冬に参加できれば、より高断熱住宅の性能をじかに感じられるはずです。
一生に一度の家づくりを後悔しないためにも、ぜひ自分自身で実感し、ハウスメーカー選びの参考にしましょう。
断熱性能は、木造と鉄骨でも異なります。こちらの記事では、木造と鉄骨の違いについて解説しています。メリットや選び方も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
家づくりにおいて、断熱性能の高い住宅を選択することは、光熱費の削減だけでなく、健康面に対する影響や環境問題への取り組みなど、さまざまな面でメリットが大きいです。
日本でも、地球温暖化に対する対策の一環として、断熱性能の高い住宅に対する補助金や減税など、省エネ施策はこれからもどんどん加速していくでしょう。これからは「断熱性能の高さ」を、家づくりの判断基準のひとつとして、さらに多くの人が重要視するでしょう。
ただし、断熱性能の高い住宅を建てるためには、まずは信頼のできる多くの実績をもつハウスメーカーを選択することが、とても大切なポイントです。
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